アインシュタインより愛を込めて 考察・感想

去年の冬コミのVAブースで発表されてから非常に楽しみしていた作品。
やはり外さなかったね。
素晴らしい作品でした。

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恋×シンアイ彼女」以来の制作陣ということで。
枕営業売春NTR堕ちエンディングだけを危惧していたが、杞憂に終わった。
いや普通に恋カケも終章を除けば批評空間で85点以上つけるくらいには良作だし。
キャラゲーとして素晴らしかったんだよね。
ライターが変な方向にさえ走らなければ大丈夫だろうと。

制作がVA、ライターが新島夕氏ということで、サマポケ感があった。
UI然り音楽然りね。

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相変わらずヒロインの描き方は上手い
キャラデザもそうだが、プレイヤーにストレスを与えないヒロイン。
全員可愛い。
ロミは当然として、他のヒロインでは佳純が好みだった。
スポーツをしていて尚且つギャルっぽい見た目。
素晴らしい属性ですね。
ロミという最強のヒロインがいなければ間違いなくイチ推しでした。

各個別ルートは比較的短めだったかな。

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あらすじを追っても仕方ないので、ここからは登場人物の心情や作品のテーマについて深堀りしたい。

魂について

本作では、魂が最重要事項として挙げられている。
魂が人の本質を司るということに設定である。
その転移に成功した時、ロボットに人の意識を宿らせることができるというのだ。
そんなことが実際に実現してしまったら、どのような問題が起こるか。
間違いなく倫理的な問題が提起される
人の意識が宿ったロボットは「人」なのか。
そのロボットを破壊した場合、それは殺人罪となるのか。
人の心のデータのコピーが可能となってしまうのではないか。
いわば禁忌とされている研究を周太の父は行ってしまっていた。

人は皆、自分の心がどこに存在しているのか一度は考えたことがあるはずだ。
本作ではその在り処を魂と位置付けている。
死後残るとされる魂という概念を、作品の中で明確に具現化がなされていることについて高く評価できる。

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研究の捏造について

数年前、日本の学術界で大きな疑惑が浮上した。
「STAP細胞」関連の論文捏造である。
一夜にして時の人から犯罪者紛いの扱いを受けることとなってしまった。
論文の不正については日常茶飯事で騒がれたほど重大なものではなかったにもかかわらず、あまりにも世間の注目を集めていたため、大きなバッシングを受けることとなった。
論文執筆の責任者格だった研究者はその後、自殺した。
こう考えたことはないだろうか。
STAP細胞は実際には存在し、だがそれを良しとしない勢力が破滅に追い込んだ、と。
本作で描かれているバッシングの描写は、ほぼ間違いなくこの事件をモチーフにしている。
何十年、何百年後かに、その論文が正しかったことが証明される日もあるのかもしれない。

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真理について

結局本作で触れられる「真理」とは何なのか。
以下はあくまで私の推測と考察である。

私のような凡人には、その内容は全く考えもつかない。
だが仮に、その真理とやらが「全ての物事が上手くいくように計算することができる数式」だったとして。(アインシュタイン博士提唱・特殊相対性理論におけるE=mc²のように)
その真理に基づいて人間が生きていくことが果たして幸せであるといえるのか。
人生にどんな困難も障害も存在しないとしたら。
それほど彩りのない人生というのもまたないのではないか。
そのことは作品の中でも暗に示されている。
周太とロミの関係は、平坦な軌跡の上には成り立ったか。
であろう。
いや、ロミに限った話ではない。
本作で紡がれる全てのヒロインとの関係において、困難が存在しないことがあっただろうか。
ここから導き出される真理とは、
苦難を克服した各人が善く生きるために在る唯一無二の叡智
である。
つまり、画一的な真理など存在しない
そのようなものは人類は持つべきではない。
真理とは、各個人の内に存在する
画一的な真理など存在しないというテーマが、本作には存在すると私は考えるのである。


アインシュタインと手紙

彼は2つの有名な手紙を残している。
一つは娘への手紙。
もう一つは原子爆弾についての手紙である。
前者は今作でラストを飾った父親のメッセージの参考になったと思われる。
後者は、「アインシュタイン=シラードの手紙」。
物理学者であったシラードがアインシュタインに依頼したルーズベルト大統領への手紙となる。
この手紙を書いたことを彼は終生後悔したという。
周太の父親も、禁忌に触れたという意味では「世界の終焉」を引き起こしかねない存在であった。
現にその技術が間接的にではあるが周太に強大な力を与えた。
科学とは諸刃の剣であるという事実が本作には前提としてある。


帰らないロミ

私が推測するに、エンディングで主人公の元に帰らないロミにはやり残したことがあるように思えてならない。
周太は全てを清算した。
彼女はまだ母親との関係修復がなされていない。
コミュニケーションも取れない状態とのことであるが、決着がつき次第周太の元に戻ると信じている
これに関しては完全に私の推測であるが…。
完全なハッピーエンドが描けないのかねこのライターは。

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父の愛について

これだけは触れないわけにはいかない。
タイトル回収が秀逸すぎる。
いつの世も子を想う親という存在は強い。
ここで衝撃とともに涙腺が崩壊してしまうのでした…。


全体として

SFモノとして非常に楽しませていただいた。
多少短めではあったが、かなり濃い内容となっていた。
本当に実力のあるライターはキャラゲーもファンタジーも関係ないのだろうね。
クオリティの高い作品を仕上げてくる。
またこの制作陣の作品をプレイしたいと切に願う。