ODEON(墨) 感想

プレミア化している本作。
それにふさわしい内容であった。
電波ゲーはプレミア化しやすいが、終ノ空よりも難解だったように思う。

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まず最初に、このゲームを完璧に理解することは本当に難しい。
人を選ぶゲームであった。
ある人は神ゲーと言うであろうし、またある人はクソゲーであると言うだろう。
真剣に考え、そして理解することができたならば、絶大な満足感を手に入れることができる。


ルートは2つ。
バックログはなし。(レトロゲームあるある)
CG回想なし。
セリフは時々入る。
音楽は秀逸だが、BGMや曲はディスクを入れなければ再生不可能。
短文形式で読みやすいが、断片的な描写がほとんどで時系列がバラバラなので理解することは難しい。
Hシーンに関して、ソフ倫を通していないためCGは素晴らしいものの描写するテキストがない。
原画は白亜右月氏。その他は音楽含め匿名もしくは不明。


古代文明と現代文明のせめぎあいとでも言うべきか。
場所はおそらく現代の東京。
そして、 過去に繁栄し、滅亡したとされるルルイエ文明。
クトゥルフ神話に登場するものである。
ODEONとは、円形音楽堂のこと。
そこでティレルは世界のために歌い続ける。

ミレイはパラドックス症候群であり、並行世界を行ったり来たりする。
それはまるでSTEINS;GATEの鳳凰院凶真のようだ。


以下は、自分がプレイした内容から推測した妄想である。
異論は無論あるべきである。

我々現代人は、侵略者である。
そしてルルイエ文明は、過去であり未来でもある。
ミレイとティレルは並行世界の同一人物、ということになる。

オデオンハローとは核施設であるので、ミレイとティレルの融合による魂の浄化とはそれすなわち現代文明の崩壊、滅亡の実現かと考えた。
しかし、TRUEENDの様子から、それは違うように思える。
ミレイは、自分のアイデンティティというものを喪失していた。
記憶を消され、両親ともに両親ではなく、性的虐待を受けていたのだ。
それは、全てルルイエと現代をつなげるために必要なことであった。
そしてそのために、自分が自分でなくなるような感覚に、常に苛まれていたはずだ。
自分が自分でないという感覚から、ティレルと邂逅したのだろう。

時間とは、空間とは、自分が作り出したものにすぎない
その時代を生きている自分それぞれにとって、他の自分の生きている世界とは他人でしかない。
各人はそれぞれ独立している。
ミレイにとってティレルは過去の自分であるが、ティレルにとってミレイとは時や空間を超越した並行世界を生きている自分である。
ミレイは自分が縦につながる存在だと考えていたが、ティレルにとっては横につながる存在だ。
そのため、ミレイは自分が何者であるかを喪失していく。

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世界とは自分が規定するものである。
ミレイが世界を否定すると、世界はまた切り替わる。
シュタゲでいうタイムリープ・世界線移動が、ミレイにとっては世界の否定である。

ティレルは、自分たちの世界の結末に失望していた。
そして来世の自分も同じように破滅への道を進んでいる。
並行世界の自分だけでも運命の輪廻を断ち切りたいと考えたのだろう。

ヴィトゲンシュタインも「論理哲学論考」でこのように述べている。

Die Welt ist alles, was der Fall ist.
世界は、事実あるところのすべてである。

Wie auch beim Tod die Welt sich nicht ändert, sondern aufhört.
死に際して世界は変わるのではなく、終わる。

つまり、世界は連鎖していない。
連鎖しているように錯覚するから自己を見失うのだ
ティレルは自分であるが、自分ではない。
ただそこに存在していたかもしれない可能性の一つであり、この世界の構成要素ではない。(実際には封印されていたが)

そのことを理解したミレイ。
ティレルと融合し、オデオンハロ―を発動させるも、それをコントロールすることができた。
これはティレルの意思のような気がする。
よって、世界の魂の浄化は行われず、この世界に自分は自分だけしか存在しないということを規定した。

おそらくこのような流れなんだろうな…と。
時系列がバラバラなんで追いかけるのが大変だったな。
文章の意味を理解していくために、場面ごとに自己(ミレイ)を規定する必要があった。
制作側がこのことを意識していたかどうかは不明だが、あえて時系列をバラバラにしたのは、そういった意図があったのだろうと勝手に想像している。

メッセージ性の強い作品である。
これから先自分の立ち位置を見失った時、この作品を思い出すだろう。
様々なSF要素が絡み合っていたが、これはあくまで副次的なもののはずだ。
この作品の根底には、
自分の世界は自分で築き上げるものである
という強い意志が存在する。
このテーマを途中感じ取ることができたため、哲学的に迷わずにENDに辿り着けたような気がしてならない。


全体として

繰り返すが、このゲームは解釈が大変であり、刺さる人には深く刺さるが、全く意味が不明だという人にはただ高いクソゲーとなってしまう。
個人的にこの作品は神ゲーに位置すると思っている。(僕は天使じゃないよと同レベル)
何回も読み直して理解していくことがこの作品を楽しむコツかなと。
本作はソフ倫を通しておらず、流通が非常に少なかったため、これからも価格の上昇が見込まれる。
興味があれば早めに手に入れておくことを推奨する。